ドイツ・ワイマールを拠点に活動するサックス奏者 Tara Sarter を中心に、NY在住の鍵盤奏者 Elias Stemeseder、ベルリンを拠点とするドラマー Lukas Akintaya が加わった新鋭トリオ「Sarter Kit」。彼らのデビューアルバムが、ミュンヘンのレーベル【Squama】からリリース。

フランス国境に近い南ドイツで生まれ育った Sarter は、音楽に囲まれたコミュニティの中で幼少期を過ごし、サックス奏者 Kenny Garrett に憧れながら、自らの音楽的アイデンティティを築いてきました。大学時代、教師でもあったピアニスト Elias Stemeseder との共演をきっかけに音の対話が始まり、やがてドラマー Lukas Akintaya も加わり、三人の即興と共感をベースにした音楽的探求がスタート。本作の制作期間は、ウクライナでの戦争やガザでの紛争など、世界的な危機が続く非常に感情的な時期と重なっていました。Sarter にとってもその現実は大きな影を落とし、レコーディングという行為と、世界で起きている出来事とのあいだに、どこか不協和音のような感覚が生まれたと語ります。しかし、その緊張感の中で、人間の感情、回復力、そして「つながり」への深く生々しい探求としての生まれたのがこのアルバム。ミニマルでありながら実験的なサウンドの中には、Sarter が信じる「音楽は人と人とを結びつけるもの」という思いが、生々しい情熱とともに息づいており、解放感のあるグルーヴが、しっかりと耳と心に響く一枚です。[GRRRDEN]