オーストラリアのサウンドアーティスト、Alexandra Spence が、レジデンスやツアー、深いリスニングの時間を重ねながら、3年間かけて紡いだ「音・場所・記憶・想像」のタペストリー。バンクーバーの雪景色、シドニーの裏庭で響く虫たちの合唱、仲間と拾い集めた陶片のかけら。本作は、季節や土地を越えて集められた音の断片が、ひとつの想像上の地形や星座を描き出すように、静かで内省的な音風景を描き出し、聴く人の内側に風景が生まれる瞬間をそっと手渡してくれるような作品です。現実と想像の境界が溶け合いながら、天候のようにゆるやかに移ろい、場所と記憶の漂流するように流れる音は、時間の感覚を忘れ、深いリスニング体験へと導きます。ストックホルムEMSやメルボルンMESSでの研究、微分音や調律されたフィードバックシステムとの対話、Tashi Wada や Patrick Farmer との交流も制作の背景に息づいています。岩の潮だまりや砂の下、フランス・ピレネー山脈で羊の群れに囲まれながら録音されたフィールド音、Serge Modular のしなやかな響き、Tim Wall によるカスタムの竪琴、拡張されたオブジェクト、手づくりの電子機器など、多様な音素材が折り重なり、時間、振動、呼吸の粒が静かに刻み込まれた一枚です。[GRRRDEN]