現代美術と実験音楽の交差点のひとつとして知られる、西武〈ART VIVANT〉が運営していたスペースで開催された、高橋悠治企画のイベント「池袋電脳カフェ」(1991年)のために制作された幻のカセット作品『Computer Café Music』が、【EM Records】よりLPで初復刻。
当時の空気をそのまま閉じ込めた本作は、現代音楽とサイバーオカルトが交錯する、妖しくアブストラクトな電子音の迷宮。サンプリング音源とFM音源、そしてプログラミングソフトによって生成される奇妙な電子の現象は、ミニマルでありながらも、音の背後に立ち上がる気配や空間の揺らぎをも感じさせ、ただならぬ音響体験を生み出しています。
90年代初頭の日本実験音楽シーンを象徴する、貴重なドキュメント。全4曲を収録した完全版は、アナログのみでのリリースです。[GRRRDEN]
=LPの仕様=
+ 当時の案内フライヤー図版を再現
+ 電子機器用IC基板(本物)とオリジナル・カセットインデックスの複製をジャケットに貼り付け
+ 独D&Mでのマスタリング/45回転カッティング
+ インサート封入/解説・川崎弘二/日本語・英語掲載
+ ADテープ変換:SUGAI KEN
(※写真はモックアップ見本です)
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本作は高橋悠治が1991年9月に西武・アールヴィヴァン運営のスペースで企画したイベント「池袋電脳カフェ」のために制作された幻のカセット『Computer Café Music』の復刻である。これは高橋悠治と藤枝守のマック(※1)を用いたコンピューターシステムの共演で、柴田南雄宅で櫻井卓の手により録音。高橋がマックでコントロールしたサンプリング音源、藤枝がMAXでプログラムを組んで操作した音響システムおよびFM音源(※2)が流れる、ほとんど意味不明のサウンドが収録された。当時のパンフレットに高橋が寄せた言葉 「日常のゆらめく時間のなかに暗い電脳空間の半透明な座標軸が陽炎のように見え隠れする」 は、彼がサイバーオカルト的なものに憑かれていた可能性を示唆し、また、当時の取材記事で 「来なかった人も重要。(中略)何かが起こっていたらしい、と後で知る。そのイメージから全然別のものが出てくる可能性がある」 と語ったのは予言だったか。理性が基根をなす現代音楽と怪しい電脳オカルト的世界が交錯したのはごく短い期間であり、本作はそれをピンポイントで記録した類い希な歴史資料である。 解説は日本の電子音楽の泰斗、川崎弘二。
=注釈=
*1:植物学者の銅金裕司によると当時のマックは「オカルト的な感じ」が漂い、価格は「軽トラ2台分」だった (『エコロジカル・プラントロン』解説より)。
*2:後に『プラントロン』インスタレーションでも使用されるシステム。