フィリップ・グラスが1970年に発表した、ミニマリズムの礎であり傑作とされる『Music with Changing Parts』。本作では、1996年に設立され、フランス・トゥールーズを拠点に活動する世界最高峰の現代音楽アンサンブル Dedalus Ensemble による、54分にわたる演奏が収録されています。スティーヴ・ライヒの作品から着想を得ながらも、グラスは自らの手で新たな反復様式を切り開きました。本作は自由な楽器編成を特徴とし、演奏者は8つのパート譜から任意に選び、合図に応じて切り替えていきます。その結果、アンサンブルの響きは常に変化し続け、限られた旋律素材の反復でありながら、多層的で鮮烈なコントラストを生み出します。奏者たちが同じ音を重ねることで心理音響的な「共鳴効果」が立ち上がり、自然と和声的基盤が形成されていきました。今回の録音では、まず短い8分音符を録音し、その後に長音を重ねるという手法が採用されています。短音と長音が共存する音の構造は、グラス自身が語った「動かないのに前進する」「変わらないまま変化する」というミニマリズムの逆説的な美学を鮮やかに浮かび上がらせます。羽のように繊細に絡み合う脈動と、天上的なハーモニーの揺らぎ。ブライアン・イーノも称賛したこの開放的な美しさは、マントラのように連なりながら曲線美を描き出し、無限に広がる音の迷宮を提示します。目を閉じ、耳を澄ませて体験していただきたい一枚です。ブリュッセルを拠点とする【Sub Rosa】からのリリース。[GRRRDEN]