Paradise Crick [cd]

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type
CD

即興アンビエント・ジャズ・カルテット"Fuubutsushi (風物詩)"の一員としても人気のインターメディア・アーティスト兼ミュージシャン、M.Sage。
最新アルバムは20周年を迎えるNYの名門【RVNG】より。

00年代のポストロック/エレクトロニカを想起させる電子音、生音、環境音の絶妙なバランスは、ヤン富田やレイモンド・スコットのようなルーツシンセサイザーのバイブス、Woo、ステレオラブ、コクトー・ツインズのようなポップ志向の表現、そしてサム・プレコップのような現代作曲家から影響を受けて制作したという背景に基づくものらしい。
制作ペースの早い彼が５年を費やしたというだけあり、一枚の中に詰め込んだ要素の多様性とその濃度の高さに唸らされる。

インスピレーション源は米文学作品「アメリカの鱒釣り」(リチャード・ブローティガン著)だという。
言葉自体は日常的で優しく軽やかだが、抽象表現が多く幻想性が高いため一般的な読み方では読解が難しいリチャード・ブローティガンの語り口のように、理解を遠ざけて暗号化された美と、パーツの並び方や組み合わせを追求する美学を感じ取ることができる。

Rolandの名機Jupiter-8をモチーフにした復刻機JP-08による存在感のあるシンセ音と、ハーモニカ、オートハープ、ティン・ホイッスル、チャイム、ハンド・パーカッション、ボイスなど様々なテクスチャーに彩られたサウンドは、記憶の断片を集めたような郷愁を誘う幻想的な一枚。本と一緒にぜひ。
[Fuzzy73]